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7つの社会運動の多様性と結びつきを明らかにする研究体制

本プロジェクトでは様々なサブセクションからなる研究体制をとっています。図に示されているように、サブセクションは日本とヨーロッパにおけるローカル化運動、そしてインド、南米(ペルー、チリ)、カナダにおける先住民運動といった7つの社会運動にアプローチします。それらの運動は差異と多様性をはらみつつも互いに結びつきあっていると考えられ、そこで本プロジェクトは科学技術とデータの流通というネットワークに焦点を当てて総合的分析を試みます。調査にあたっては、国内外でのフィールドワークにあわせて、Social Network Service (SNS)やデータ流通に焦点を当てるデジタル人類学の方法を組み合わせます。

「トランジション・タウン運動」「食のローカル化運動」「市民発電所」「Fab Lab (FabCity)」の4つのサブセクションでは、国内各地やイギリス、フランス、オランダ、アメリカ、デンマーク、スペインそれぞれの地域で実践されているローカルな草の根運動に着目します。これらの運動はいずれも地域にある資源を用いて食料や日用品を自ら作り、交換し、循環し、再利用することでローカルな新しい関係性を構築しています。しかし、これらのローカルな運動は共通のプラットフォームや最先端技術を通じて、逆説的にグローバルなネットワークの運動を作り上げています。つまり、地域に根ざす方向性と惑星的な環境プロセスに介入する方向性が表裏一体となっていると考えられます。

一方で「インドの先住民運動」「南米の先住民運動」「カナダ・イヌイットの自治運動」のサブセクションは、伝統的な生活様式とその生業基盤となる環境を守ろうとする先住民運動に着目しています。ここでは、植物に関する独特の思考やグループの社会文化的な自治や伝統的な生業の維持といった実践が、いかに先述の先進国におけるローカル化運動と連携しているのか、また地球規模での持続可能性をめぐる環境政治と相補的であったり、あるいは時に矛盾するのかを明らかにします。惑星規模の環境の課題をまえにして見逃されがちな「人間」そのものの歴史的多様性や不平等を視野に含めることで、人新世の環境政治における人間の多様性にもアプローチする狙いがあります。

これらの7つの社会運動に対して、本プロジェクトでは総合的な分析を試みます。「惑星人間関係についての哲学的考察」「語り、イメージの環境人文学的考察」「脱成長ビジョンの検討」の文学・哲学を専門とするサブセクションから、人新世における人間と惑星の相互的な関係を、7つの社会運動が生み出しつつある身体・情動・科学技術とデータの間の多様で新たな結びつきに注目して理論化することの狙います。惑星と人間の新たな情動的関係、惑星と人間を媒介する語りやイメージの役割、そして経済成長に変る持続可能な脱成長の未来のビジョンが明らかになると考えられます。

Research Structure to Elucidate the Diversity and Connections among Seven Social Movements

This project has a research structure consisting of various subsections. As shown in the figure, the subsections tackle seven social movements: the localization movements in Japan and Europe, and the indigenous movements in India, South America (Peru and Chile), and Canada. These movements are considered to be interconnected despite their differences and diversity, and this project attempts at a comprehensive analysis focusing on the networks of science, technology, and data distribution. The research will combine fieldwork in Japan and abroad with digital anthropology methods that focus on social media services and data distribution.

The four subsections, Transition Town Movement, Food Localization Movement, Citizen Power Plants, and Fab Lab (FabCity), focus on local grassroots movements practiced in various parts of Japan as well as in the United Kingdom, France, the Netherlands, the United States, Denmark, and Spain. These movements are all local. Moreover, they are building new local relationships by using local resources to produce, exchange, circulate, and reuse food and daily necessities. However, these local movements are paradoxically creating a global network of movements through common platforms and cutting-edge technologies. In other words, the local roots trend and the intervention in planetary environmental processes trend are considered to be inextricably entangled.